オルセー美術館で、ドガの企画展をやっていたので、見に行ってきました。
毎回のことですが、オルセー美術館の行列はすごいですね。事前にインターネットでチケットを買っていたのに、40分くらい外で待ちました。しかも雨も降ってきて寒かったので、もうやめようかと思ったくらいです。。。
なんであんなに時間がかかるんでしょうか。
この展覧会のテーマは「ドガ ダンス デッサン:ポール・ヴァレリーがドガへ送ったある讃辞」展となっていて、ドガ没後100周年を記念して開催されています。ポール・ヴァレリーというのは、フランスの詩人ですが、ドガがすでに高齢となって成功を収めていたころに、ヴァレリーはまだ20代そこそこの青年だったのですが、二人の芸術観が一致して親密な交流を行っていました。ヴァレリーは著書『ドガ ダンス デッサン』の中で、ドガの絵画の中にある動きのモチーフを分析していて、当時、絶賛された書籍の一つでした。
この展覧会では、この『ドガ ダンス デッサン』をもとに、ポール・ヴァレリーのドガへの講評や、ドガの様々な代表作を見ることができます。
こちら、右側の若い男性の方がドガです。ドガってこんな顔をしていたんですね。
これはドガが実際に使っていたパレット。
ドガが使っていたチョーク。
そしてこれがポール・ヴァレリーの著書『ドガ ダンス デッサン』
- 作者: ポールヴァレリー,Paul Val´ery,清水徹
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/12
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さらに踊り子の足の動きや、人の身体の筋肉の動き方、衣服のしわの様子が光によってどう変わるか、人の顔の表情と光の関係、こうしたものを線でスケッチした何百というデッサンが展示されています。
これを見ると、ドガがいかに研究熱心だったかが分かります。
正直、ドガといえば、「踊り子」くらいしか知らなかったし、どの絵をみても同じようなバレエの少女の絵ばかりで、つまらないなーという印象しか持っていませんでしたが、この展覧会を見て、ドガがどうして踊り子をたくさん描いたのか、そしてその他にもさまざま作品を残していたことが分かりました。
こちらはベレリー一家の肖像画を描いたものですが、肖像画なのにみんな目線がバラバラの方向を向いています。これが新たな試みだったようです。
少女たちが着ているドレスの白いエプロンには、線で質感を表すドガの研究成果が表れています。
人間の身体の筋肉や動き方を研究していたドガは、絵画だけでなくたくさんの彫刻も残しています。これはバレエダンサーの少女が休めのポーズをとっているところの彫刻『14歳の少女ダンサー』。こうした一瞬の動きに魅せられて、ドガはたくさんの踊り子たちの作品を残したんですね。確かにじっとしているモデルの肖像画を描くよりも、一瞬でその動きが変わってしまう踊り子たちの絵は、難しいけれどやりがいのあるテーマだったのでしょう。
こちらは、アイロンをかける女性二人。右側の女性はアイロンをかけていて、左側の女性は疲れてあくびをしています。どちらもモデルがじっとしているようなポーズではなく、日常の一瞬の動きをとらえたものです。
これはバスタブの端に腰を掛けて髪をまとめる女性の一瞬の動きをとらえたもの。
これは本番前の踊り子たちの様子。それぞれが自然な動きをしています。
これは『バレエ教室』という有名な絵らしいです。踊り子たちを個別にデッサンし、入念に構図や配置を計算しながら登場人物を合成したそうで、踊り子たちの本番の舞台では見せない日常的な姿や人間性に溢れた年相応の仕草が、ドガの鋭い観察眼によってありありと示されている名作だといわれています。
こちらは『花束を持った踊り子』。舞台で観客から花束を受け取り、お辞儀をする踊り子の一瞬の動きと表情をとらえた作品。
他にもたくさんの小さな彫刻作品がありました。
こちらは少し変わった構図が特徴の作品です。壁が画面の中央の半分以上を占めていて、壁のこちら側の階段を上がる踊り子たちが、ダンスホールに合流する様子を描いたものです。ダンスホール全体を描くのではなく、壁を大きく描くことによって、ダンスホールに合流する踊り子たちの動きを強調した作品といえます。
こちらはダンサーたちがバーを使って行うレッスンや、バレエのポーズの一つ一つをデッサンしたもの。
他にもたくさんの作品がありました。普段、ドガという画家に注目して、これだけ多くの作品を目にすることはなかったですし、ドガがこんなに研究熱心な画家だったとは思いませんでした。特にすごく好きな画家というわけではないけれど、作品を知れば知るほどその人の人物像が見えてくるという点では、とても興味深い企画展だったと思います。