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オルセー美術館で象徴主義を観る

オルセー美術館ドガ展を見た後、せっかくだから少し常設展も見て行くことにしました。入るのに40分も並んだので、このまま帰るのはもったいないですし。

オルセー美術館は何回か来ていますが、ルーブル美術館同様、見どころがありすぎて、全部は見きれていません。今回は、象徴主義の作品を中心に見ることにしました。

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象徴主義(シンボリズム)というのは、19世紀末から20世紀初頭にかけてフランスでおこった反写実主義的な運動のことで、これまでの印象主義が、ただ目の前にある風景を写実的に描いていたのに対して、目に見えない思想や魂を描くというものでした。
象徴主義は、オルセー美術館の1階、真ん中のこの大きな回廊の右側にあります。
代表的な画家は、モロー、ルドン、クリムトムンクなどです。

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下の絵は、エドワード・バーン=ジョーンズの『運命の女神の車輪』という有名な作品。右にいる男性は奴隷と王、どんな人間も死の女神の拷問(大きな車輪)からは逃れられないというようなメッセージがあるとされています。死の女神は美しく、作品の解説を読まなければ、この作品にそんなに暗いメッセージがこめられているようには思えません。

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こちらもバーンジョーンズの作品『サブラ王女』。「聖ゲオルギウスの伝説」の中の登場人物であるサブラ王女は、くじ引きの結果、竜をなだめるための生贄となります。最後は聖ゲオルギウスが竜を退治して、無事に帰還することになります。この絵は竜の生贄になる前の王女の様子を描いたものなので、おだやかな絵に見えますが、彼女の運命の暗さを暗示しています。

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ここからはギュスターヴ・モローの作品が続きます。
モローは神話を題材にした絵を数多く描きました。神話を題材にした絵はルネッサンス時代からも多く取り上げられてきましたが、パターンは決まっていて、どれも同じようなシーンが描かれてきました。それに対して、モローの作品は、どれも神話の中の場面をモロー自身の解釈で全く異なる構図で描きあげているため、幻想的でありながら、どこか暗い作風になっています。

これは『ヘシオドスと女神ミューズ』。竪琴を持って歩く詩人のヘシオドスの後ろに芸術の女神であるミューズが立ち、彼に芸術のひらめきを与えているところです。

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こちらの作品はタイトルがフランス語しか見つけられなかったので、そのまま記します『L'enfance de sixte-quint dit aussi diseuse de bonne aventure』。

少年の横にいる女性は占い師らしく、彼の未来予言しているようです。

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こちらは『ガラティア』。ガラティアはギリシャ神話に登場する女性で、乳白色の肌を持つ美女。

ガラテイアはシチリア島でニュンペーの息子である青年アーキスと恋に落ちます。しかし、かねてよりガラテイアを恋慕していたポリュペーモスがこれに嫉妬し、巨石を投げつけたためアーキスは殺されてしまいます。死んだアーキスの血はエトナ山そばを流れる川となったというもの。

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こちらもフランス語のみのタイトル。『L'enlevement d'europe』ヨーロッパからの脱走とでも訳すんでしょうか。

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これもフランス語のみ『Le calvaire』。カルヴェーとは、何度も繰り返す悪夢のことだそうで、確かに絵の様子を見ると悪夢のような恐ろしい光景になっています。

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こちらはモローの代表作の一つ。『オルフェウスの首を運ぶトラキアの娘』
ギリシャ神話に登場する吟遊詩人で竪琴の名手であるオルフェウスは、
エウリュディケと結婚をするが、彼女は蛇にかまれて死んでしまいます。彼女を生き返らせようと、オルフェウスは、黄泉の国の王のハデスに頼み彼女を連れて地上に戻ることを許されます。しかし、彼は、決して後ろをふりむいてはならないという条件で。妻を連れて、とうとう地上へ着こうかというとき、オルフェウスはつい振り返ってしまい、妻は永遠に黄泉の国から戻れなくなってしまいます。
ここまでは有名な話なので、私も知っていました。しかし、この話には続きがありました。
妻を取り戻すことに失敗したオルフェウスは、女たちを避けるようになりました。そこでトラキアの女たちは、オルフェウスを振り向かせようといろいろ努力をしたが、彼が見向きもしなかったことに腹を立てて、彼を殺し川へ捨ててしまいます。竪琴はゼウスが星の中において、琴座ができました。

この絵は、女たちによって八つ裂きにされ、竪琴とともに流れ着いた詩人のオルフェウスの首を拾い上げるトラキアの若い娘を描いたもの。

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モローに続いて、こちらはギュスターヴ・ドレという画家の作品。
ドレはストラスブール出身の画家で、故郷が戦争でドイツに負けてしまったことを悲観してこの絵を描いたそうです。人々は殺され、真ん中にいるスフィンクスにすがる女神も今にも死んでしまいそうです。この絵はドレの絶望と悲しみを表現した作品です。

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これはピエール・ピュヴィ・ド・シャヴァンヌ(Pierre Puvis de Chavannes)の『海辺の若い娘たち』。三人の娘の顔はどれもそっくりなので、同一人物がモデルだとする説もあるようです。ピエール・ピュヴィは象徴主義の画家に分類されてはいるものの、印象主義の光をモチーフにした明るい色調が強く残っていて、穏やかで優しい作風が多いです。

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これもピエール・ピュヴィの三連作。左から『瞑想』、『歴史』、『警戒』。
こちらもパステルの淡い色調で描かれています。

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オルセー美術館象徴主義めぐり、まだまだ作品はたくさんありましたが、疲れたので今日はこの辺りでおしまいにします。 

 

新生オルセー美術館 (とんぼの本)

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 フランス絵画史 (講談社学術文庫)

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